事例研究

販売イベントは儲かるのか?利益は絶対額で見るもの

このHPの持つタイトルから外れてしまいますが、事例研究の始めとして「販売イベントは儲かるのか?」について、仕入れ販売をしている小売店をモデルに考えてみたいと思います。

実は私の住んでいる地区にスーパーが有りまして、金曜日はヨーグルトの日と称して一流ブランドの商品が110円(以降全て消費税前)になります。多くのファンがこれ目当てに来店します。ですが、もっと面白いのが、毎週木曜日は10%割引の日と謳い、支払い額から10%をレジで引いてくれます。毎週イベントなので安心感からか大混みするほどではありませんが通常より混んでいます。実は私も時々買い物に行くので、分かるのです。

そこで、私は考えました。通常の会社では10%の純利益を確保するのは大変な事ですが、レジで売上(お客様から見れば支払い)を直接10%を引いて(すなわち純利益から引いて)利益は出るのでしょうか?こんな疑問が浮かんできます。もしかするとこの日の為に数日間買い控えをするから、木曜日前後は店の売り上げがかなり減る!などとも想像してしまいます。でも、お店は続けているのですから、きっと利益は出ているのでしょう。

この仮説を数字を使って検証してみしょう。小売店の生鮮品や商品の仕入れ率は私には分かりませんから、仮に販売価格100円の商品で50%(50円)が仕入れに掛かるものとします。

100円の商品で50円の仕入額とすると残り50円が利益になります。そこで10%値引きは10円の値引きなので、①図で利益はそのまま10円減って40円になります。小売店はこの利益から人件費や店舗維持費を払うのですから、10%(10円)無くなると大損になります。   下①図

これを、お客の立場から見てみます。もしお客様心理が働いて10%(10円)安くなったんだから、10円余分に買える!だから100円分買った。儲かったとなります。これを検証します。②図をご覧ください。10円で買った中には5円の利益が含まれます。当然仕入れも5円増えますが、利益だけ見れば45円になりました。まだ5円足りません。

お客様が、100円の物が90円で買えたので喜んで後10円買い増せば小売店の利益は5円増え、更に10円(合計110円)買い増せば小売店は元の利益50円を確保できます。その後120円買ってくれれば増益(55円の利益)になってしまいます。この商品の例では、100円を基準に10%値引きをしても、お客様が元値20%増しの120円買ってくれれば完全な増益になり、販売イベントは成功となります。

小売店は販売イベントで通常客単価を20%引き上げられれば大成功という事になりました。何故こうなるのでしょう。

これは限界利益の考え方です。利益には売上総利益、営業利益、経常利益、純利益の他に限界利益と言うものが有ります。自社の限界利益が分かれば、イベントの成功に向けての計画も立てやすくなります。

限界利益=売上高-変動費(小売店では商品仕入れ額)  で計算できます。

限界利益の使い方は、次の機会にお話ししたいとおもいます。興味がある方は「限界利益」とネットで検索してみてください。

※:厳密には上記にある10円買い増ししても10%値引きが掛かるので利益の金額は少し変わりますが、話を分かり易くするため敢えて無視しました。                           2018.11.23  つづく

限界利益が分かれば先の利益が見えてくる

例えば、売上が1億円で経常利益が1,000万円(利益率10%)の会社が有りました。売上が1,000万円増えたら、利益も100万円増えるのでしょうか?

一般的に言えば、このケースは100万円以上の利益増になります。それどころか、500万円増えるかもしれません。それこそが、限界利益のなせる業なのです。

この会社①図の利益構造であると考えてください。売上の半分は仕入れですから、どんなに売上があっても半分は仕入れ先に支払いをします。このように売上に比例して発生する費用を変動費と言います。1,000万円の売上の内、仕入費500万円は払うことが確定しているので、残りは500万円です。

売上1,000万円 - 仕入れ費500万円 = 500万円 (限界利益)

と公式にある通りで、この500万円の中から会社は人件費や経費を払って残りが本当の利益となるはずです。ところが、現実的に会社は売上1億円あり経常利益が1,000万円出ているということは、人件費も経費ももう払ってしまっているという事です。そこで、新たに発生する費用は無いので

◇◇ 利益が500万円増えた となります

利益の出始める直前の売上のことを損益分岐点売上高と言います。この額をきちんと把握しておけば、会社の売り上げ目標を設定する為に大いに参考になります。損益分岐点売上高については次の機会にお話します。興味のある方は、ネットで検索してみてください。

2018.12.29    つづく

損益分岐点売上高のお話です

「利益の出始める直前の売上げ」と前回書きましたが、正確には売上げから仕入れや人件費・経費(減価償却費を含む)を全て引き算し、丁度利益が0円になった時の売上げを損益分岐点売上高といいます。この売上げを超えさえすれば利益がゴロゴロと出てくることになります。公式で表現すると

損益分岐点売上 = 固定費 ÷ 限界利益率  となります。

限界利益については本文の上の方で既に書いてありますが

限界利益=売上高-変動費(小売店では商品仕入れ額)  と表示し

限界利益率となると売り上げに対しての率(%)の事なので

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 ×100(%と表示する為)

となります。少し複雑になりましたが、もう少しですから容赦ください。

事例となったスーパーさんの年間売上が12億円、利益が6千万円(5%)出ていたと仮定すると、このスーパーさんの損益分岐点売上高は以下の計算によって分かります。

スーパーさんの年間売上高 12億円

仕入高    6億円(100円の売上で50円が仕入れなので)

固定費(人件費・経費) 5億4千万円(利益が6千万円出ていたので)

利益     6千万円(これは営業利益としましょう)

すると

限界利益 = 12億円 - 6億円(仕入れ総額) = 6億円

   限界利益率 = 6億円 ÷ 12億円(売上高)× 100 = 50%

その結果を損益分岐点売上の公式に入れると

損益分岐点売上 = 5億4千万円 ÷ 50%(0.5のこと)

             = 10億8千万円となります

このスーパーさんは、年間売上が10億8千万円のとき利益0(損がなくなった)となり、そこから1億2千万円売上が増加したことで6千万円の利益(増加売上げの50%)を得たことになります。12億円に対して6千万円は5%ですが、増加売上げに対して50%の利益率とは信じられない位大きい数字となりました。

結論:限界利益率の大きい会社は損益分岐点売上を超えてからの売上に対する利益の出方も大きいが、その反対に損益分岐点まで売上が上がらない場合の損金も大きくなります。

さて、限界利益率は高いほうが良いのか低いほうが良いのか、ご興味のある方はまず自社の決算書から数字を拾って、実際に計算をしてみてください。

2019.1.31 飯野孝之 つづく