事例研究

一品一葉の金型製作における営業見積りの簡易計算のモデル Ⅰ

私が、過去に、ある会社に納品しました営業見積りの簡易計算書について、事例研究にあげてみたいと思います。

考え方

営業用見積りはあくまで顧客に示すもので、そこには購買者と販売者との力関係が存在します。その意味では交渉の結果が価格であり、通常の利益が取れるか、損を覚悟で見積もるかは決裁する会社の方針に左右されてしまいます。

ここで言う営業見積りとは、生産者の製造の標準的な原価を簡易的に計算したうえで、それを基として作った原価見積書に営業関係者が手を加え、営業見積りとして完成させる半自動的な見積書作成支援の仕組の事を指します。

一貫してついて回る基本公式

金額(標準的原価)を見積る場合の計算は一貫して 数 × 単価 であります

具体的には

消費時間 × 時間単価

人の数 × 一人当たり単価

機械操作回数 × 操作辺り単価

など、簡易的に見積る為に、個々必要な動作毎に、上記の様な「数×単価」の公式を作ります。では、作業を時系列に説明いたします。

作業工程1(経費原価)

決算書から標準的な経費・人件費を求めて行く。

決算書は、中小企業では税理士さん任せになることが多いと思います。数字については心配ないのですが、製造原価と販売費・一般管理費(販管費)の仕分けについて社内で整理して置く事をお勧めします。それは、税金の計算が主たる業務の税理士さんと比較し、管理が主体になる社内では経営者の納得が必要になるからです。それから、使った決算書の中に、特に異常な金額が含まれているか、またその逆があるか、検討し修正する必要があります。特に今期だけ掛かった大きな修繕費用や、本来掛けるべき費用を期越えした等がこれに当たります。金額の整理が出来ましたら、以下の作業に進んで行きます。

第一段は製造原価か販管費を分けて行きます。その為には勘定科目別に見直しを進めます。例えば、工場の電力料と販管費の電気料を混ぜているとか、一旦細かく見直しましょう。

こうして整理できれば決算結果は変わらないものの、生産過程で消費した金額の総額は正確に知ることになります。

2019.6.16 つづく

一品一葉の金型製作における営業見積りの簡易計算のモデル Ⅱ

決算書から離れて、製品から原価について考えて行きます。

実際原価を製品に乗せて行くのだとしたら、教科書的に言いますと、原価(お金)を作った製品に直課するものと配賦するものに分かれます。直課とはその製品に漏れなく1対1で乗せることが出来るもので、配賦とは何かの基準を定め、その基準に従い掛った費用を割り算(この製品には10時間分の加工費用が掛かっているとか)して乗せる方法です。ですから配賦は基準(個、時間、人数、回数その他いろいろ)次第で乗せる費用も変わってきます。

製品原価(金額) = 直課原価 + 配賦原価

実際原価でもこうですから、製品を作る前に予想することはもっと曖昧な数字を作ることになってしまいます。その事を頭に入れた上で手間を掛けず、ほどほどの精度で見積る仕組みを作らなければなりません。ここで言うほどほどの精度とは後に精度の検証が出来るということで、これも出来なければやる価値もありません。

まずは、直課出来るものを探すこと

自社の生産品に直課できる可能性のある項目(経理では勘定科目という)を具体的に探し出して、どういう方法で直課できるのか検証してゆきます。今回は金型でしたので、2プレート型や3プレート型の金型を作るとします。基本のモールドベースは専門のメーカーから購入するとします。その他の細かなパーツも買うとすれば材料費は確定します。すなわち購入金額を製品に直課できるということです。材料費以外に直課できるものはありますか?なかなか見つからないのですが、直課出来れば原価の精度は更に上がります。

2019.7.8 つづく

一品一葉の金型製作における営業見積りの簡易計算のモデル Ⅲ

 原材料の原価(通常仕入れ原価)と、それを金型という当社の販売製品に加工する原価を簡易的に算出する方法について考えて行きます。原材料は外部から買うのですから比較的正しい金額を見積もれます。しかし金型にするには加工が必要で、加工金額を機械毎に出さないと、きっと相手の購買担当者は受け取ってくれないでしょう。

 さて、私は始め図面を見て、表示寸法から切削する容積を計算し、放電加工など時間が掛る加工は図面上で長さを計って時間を推測し(それらを単価に掛けて金額を)見積もろうと考えました。でも時間を掛けずに簡易的に見積もるという原則を守る為には別のアプローチで見積もらないと出来ないと考える様になりました。

 まず、材料の加工時間とは労働時間か、機械加工時間かで整理しました。労働集約的産業は部門(原価を集める部門)別原価を計算すれば人に関わる経費が機械の運転費用と比べて圧倒的に大きい事が分かります。ですから、人の動きをある程度正確に捉える事が重要だと考えます。でも一品一葉の金型の加工に関する労働時間を図面だけを見て見積ることは至難の業でしょう。そこで、作業内容を細かく分解してみて行きました。

 加工機に限らず機械とは、開始前に加工対象に合わせて前段取りをします。いざ加工が始まると自動機なら一定時間機械が仕事をしますし、手動加工なら人が付いて仕事をします。そして終了し対象物を外して、その後清掃や治具の片づけ(後段取り)をします。

 ここで、先ほどの話ですが経費は人に掛かるものが圧倒的に大きいので、人の関わる前段取り、後段取りそして手動加工の時間を見積もることになります。実際に現場に入って聞いてみたら、手動機械は殆どなく、ほぼ100%自動機械で加工をしている事が分かりました。

 であれば、人の関わる時間は前後段取り時間だけとなります。では、段取り時間は何を基準に決まるのでしょうか。聞き込むと、前段取りでは治具をセットしますが、それより自動運転のプログラムのセットに時間が掛っている様です。それを基に

時間 = 前段取り(治具取付け+プログラム入力)+加工運転時間+後段取り(治具外し+清掃)

で総時間を求めることが出来る見込みが立ってきました。

次に、作業時間を分解すると、固定時間+変動時間になりますが、計算の前提を

段取り時間 = 必ず行う作業(固定) + 治具取付け時間(変動) + プログラム入力時間(変動)

 こんな風に考えて聞き込みをしたところ、変動と考えていた作業もさほど変動しない事が分かりました。更に熟練者なら加工に必要な全ての加工機、加工順は図面を見て直ぐに判断がつくという事でした。一般に金型加工をする場合の加工機と行程は下記のものになります。また夫々に前段取り、加工時間、後段取りがセットになり、運用されています。

  • 作業工程の一部を表示しましたが、作業毎に段取りと加工時間があります

 簡易見積なので、標準的な金型(重さ、容量、部品点数など)を決めてその場合の工程単位に標準時間を決め、標準より掛かる、掛からない位の基準でマトリックスを作成し、点数を付けることで簡易的に時間を見積り、加工賃率を掛け合わせ金額を求めて行く簡易の原価見積りです。工程ごとに時間が分かるので、達成未達成が明確になり、管理の精度を上げて行く手段にもなりそうです。こんな表を作って眺めてゆくうちに、この作業毎に標準的な加工時間が決められないか?という考えが湧いてきました。

2019.08.12 つづく